人工股関節の材質について
慈恵医大第三病院 整形外科 股関節診療班 の原田 直毅と申します。
今回は、人工股関節置換術(THA)で使用するインプラントの材質についてお話します。
前回人工股関節は「カップ」「ライナー」「骨頭」「ステム」の4つのパーツからできているとお話しました。
1890年頃から長い歴史の中でさまざまな試行錯誤の結果、パーツごとに適した材質・デザイン・加工技術を開発し、人工股関節は進化してきました。
骨に直接くっつく「カップ」と「ステム」は「チタン合金」で作られているものを多く使っています。チタン(titanium) 元素記号 Ti 元素番号 22ギリシャ神話の巨人タイタンに名前を由来しています。
特徴として、軽量、高強度、高耐食性、高耐熱性に加え、身体に対して金属アレルギー反応を起こしづらいという高い生体適合性を持っています。
航空機や自動車の部品、眼鏡や腕時計、ゴルフドライバーなど日常生活の中で広く利用されています。
(画像出典:Wikipedia)
「ライナー」と「骨頭」は股関節を動かす際に実際に動く摺動面(しゅうどうめん)としての役割を持ちます。そのため、こすれる力に対して強い材質でなければなりません。こすれることで材質の表面が削れてしまうことを摩耗(まもう)といいます。
耐摩耗性の高い材質を研究、開発してきた歴史があり、現在は「ライナー」には「ポリエチレン」を、「骨頭」には「セラミックス」を使うことが多くなっています。
「ポリエチレン」とは、プラスチックの1つで、レジ袋や包装フィルムに広く利用されています。医療用に改良された超高分子量ポリエチレンという材料をさらに加工し、耐摩耗性を向上させています。
「セラミックス」は金属以外の無機材料を焼いて処理したものの総称で、陶器や磁器として昔から使われております。以前は焼き物なので割れてしまう強度不足の問題がありましたが、研究、開発が進み生体内での破損する確率は0.004%とかなり低くなっています。
インプラントの役割、設置部位などに応じて適材適所の材質をそれぞれ使い分けて人工股関節は作り上げられています。
患者さんからよく「金属を入れるので足が重くならないのか」という質問を受けることがあります。
次回は「インプラントの重さ」についてお話します。
(文責:原田 直毅)
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