新概念:ロコモティブシンドローム(運動器症候群)
慈恵医大第三病院整形外科の小泉祥太郎と申します。
今回は、最近徐々に耳にするようになってきたロコモについてお話しさせて頂きます。
日本は世界に先駆けて高齢化社会を迎え、平均寿命は約80歳まで延びています。平均寿命と健康寿命の間には男性で約9年、女性で約12年の差があり、高齢化に伴い運動器障害も増加傾向の一途を辿っています。
そこで、日本整形外科学会では運動器障害による移動機能が低下した状態を「ロコモティブシンドローム(以下ロコモ)」と命名し、和文では「運動器症候群」として提唱されています。原因としては、加齢に伴う筋力の低下や関節・脊椎の病気(変形性膝関節症、変形性腰椎症など)、骨粗鬆症などにより運動器機能が衰え、要介護や寝たきりになってしまったり、そのリスクが高い状態です。
要支援・要介護となる原因の24.8%は運動器障害であり、女性の場合は約3割近くが運動器疾患によるものです。また、現在のロコモ人口は予備軍も含め4700万人と言われています。(東京大学の研究によるもので、2000人のX線検査、骨密度検査からの推計値です。)変形性膝関節症は2530万人、変形性腰椎症は3790万人、骨粗鬆症は1300万人と言われており、この数字はメタボの人口(すなわち高血圧症3970万人、糖尿病820万人、脂質異常症1410万人)に匹敵する数となっています。
そのため重要となってくるのは、まずはロコモチェックで運動機能の衰えを早めに察知し、ロコモトレーニングでロコモの予防に努めましょう。
今回は自宅で出来るロコモトレーニングを紹介します。
1,バランス能力を付けるロコモトレーニング:片脚立ち
左右ともに1分間で1セット、1日3セット
①床に着かない程度に片脚を上げます。
※転倒しないように、必ず掴まる物がある場所で行って下さい。
②姿勢を真っ直ぐにして下さい。
2,下肢筋力を付けるロコモトレーニング:スクワット
5-6回で1セット、1日3セット
①脚を肩幅に広げて立ちます。
②お尻を後ろに引くように、2-3秒かけてゆっくりと膝を曲げ、ゆっくり元に戻ります。
※膝がつま先より前に出ないようにします。
新型コロナウイルスのため外出頻度も減っていると思いますので、自宅で上記のようなトレーニングを行ってみるのはいかがでしょうか。
まだまだ寒い時期が続きますが、お身体に気を付けて生活していただけたら幸いです。
なにかご不明な点や気になることがありましたら、外来でお気軽に相談して下さい。
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